子育て支援としてのドアツードアサービス

「こころタクシー」の展開

19日、“杉並移動サービス情報センター”主催の「すぎなみ移動カフェ」の企画に参加した。
国交省がここ数年ユニバーサルタクシーなど改造乗合いタクシーの車輌設計に向けた、検討を行っている。障がい者、高齢者、子育て世代などが利用しやすい、タクシーの形状・車輌価格・利用者の意向調査などがその中身となっている。

今回はすでに子育て世代に安心して乗車してもらおうと、昨年5月からスタートした練馬区「こころタクシー」の話を聞くことができた。
このタクシーは登録制で練馬区を中心に2000人の会員がおり、電話を受けてから配車するようになっている。登録時に個々のニーズを具体的に聞き、ドアツードアの対応を基本におこなっている。車輌にはチャイルドシート(双子の赤ちゃん用にも複数設置可)を装備し、絵本・おもちゃやDVD、マタニテイケアセットなども設置されているとか。また年4回の会報も会員に向けて発行している。

ドライバー20人のうち女性が9割で研修もおこなっており、視覚障害ガイドヘルパーや全身性障害ガイドヘルパー、ホームヘルパー2級取得者などがいるとの事。
普通タクシー運転手の給与体系は歩合制だが、固定給にして安心して働ける場にしているということだった。女性の働く場としてもその経験を生かせる場となっているという。

利用内容は様々だが、例えば下に子どもがいて、上の子を塾へ送り届けて欲しいという依頼も結構あるという。ドライバーがドアツードアで対応するが、信頼関係がなくてはできないことでもある。高齢者の通院もそうだがこれからドライバーだけでは対応しきれない状況が増えてくるのではないかという課題もあるとのこと。

会場にはもう一人ゲストとして練馬区から職員が参加しており、練馬区の「ねりまキッヅ安心タクシー」事業の紹介があった。
この事業は安心して利用できるタクシーの普及を図ることで、子育て世代が安心して外出しやすい環境をつくる・・ことが主旨との事。
内容はタクシー事業者への「講習」で子育て検定と認証をおこなうというものだった。練馬区の33事業所のうちまだ10事業者の参加に留まっているが、底上げしていきたいということだった。

会場からは税金でそこまでやるのは疑問!業界の自助努力でやるべきものではないか?・・などの声もあったが、
赤ちゃん連れで参加したママからは利用できる制度など自分で選別して使うのも日々の慌しさでとても大変なので、行政のタクシー事業者への講習など必要!!という声もあがった。

参加している方から様々なお話しや行政の発行している「子育て応援券」の利用範囲に入れられないか・・などの提案もあり、今後の展開を考える良い事例となった。

タクシー業界の新しい事業の模索が、誰もが安心して移動できる環境づくりにつながることに期待したい。

冒頭で挙げたように、国交省が検討しているユニバーサルタクシー(ユニタク)のモデル車種が秋のモーターショウに展示されるらしい。
いよいよハードが整い、ユニタクが現実のものとなる日も間近かとなるようだ。しかしそれを運行する人材が整わなければ本当の意味で安心して乗車できるところまでは行かない。
またドアツードアを実現してこそ真に使えるものとなるはず。

まだまだ課題の多い問題だが、移動の自由を保障することを促進できる制度づくりに向け検討したい。

(写真上は「こころタクシー」の吉田さん・下は赤ちゃん連れで参加した練馬区のママ)