「蟻の兵隊」上映中

奥村和一さんの戦い・希望と絶望

ある年の正月靖国に参拝に来た若いOLたちに奥村和一さん(80才意)が問う。「ここに参拝に来たの?誰が祀られているか知ってる?」・・こんな場面から始まるこのドキュメンタリーは終戦直後も4年間にわたり中国・山西省で戦いを続けさせられた奥村和一さんを追った物語。

日本軍山西省残留問題とは、終戦当時中国にいた陸軍59000人のうち約2600人がポツダム宣言に違反し、武装解除を受けることなく、中国内戦を戦ったことを国は「兵士達が自ら志願し戦争を続けた」とし“国に責任はない”とする問題。

今年84歳になるという奥村さんは60歳で定年後、図書館に通いだし「自分達はなぜ残留させられたのか?」を調べ始めたと言う。その中で明らかになってきたことは、当時の軍が残留の仕方を個人の発意にすることを意図した事、最終責任を取るべき人物は、偽名を使い、誰にも知られずに1人で中国を脱出することを文書で保障させたこと、など。
これら残っている文書を提出し、元残留兵達は2005年軍人恩給の支給を求め最高裁に上告するが請求は棄却された。

奥村さんは言う「国がポツダム宣言に違反することになるので、審議出来ないという事」と・・
映画では奥村さんは当時80歳で中国山西省内3000kを移動したという。初年兵の教育の仕上げとして中国人を自ら銃剣で突いたという処刑場にもおもむき、自分たちがしたことは何だったのかを掘り起こさなくてはならないと言う姿に、戦争の深い傷をいまだに負っている姿を見る。

上映後、監督の池谷薫氏と奥村和一さんの対談があり、奥村さんがこの話を監督から持ちかけられた時「しめた!」と思ったこと、撮影で行かれた中国の処刑場のことを「行かなければならない所」と言われたことは印象に残る。

ロビーで若者が奥村さんに話しかけていた「僕達若者に何を期待しますか?」奥村さんはその問いに応えたのだろうか?

「蟻の兵隊」「延安の娘」どちらも中国を取り続けてきた池谷薫監督の作品。“ポレポレ東中野”で上映中!5月24日〜30日

<写真上は「蟻の兵隊」「延安の娘」ポスター>
<写真下は“ポレポレ東中野”入口>

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